相模湾の下に眠るもう一つの巨大地震
日本列島は世界有数の地震多発地域であり、特に関東地方は相模トラフと呼ばれるプレート境界が存在することで、歴史的にも大きな地震の被害を受けてきました。その代表格が、**1923年の関東大震災(大正関東地震)**です。
この関東大震災は**相模湾の下にあるプレートが沈み込むことで発生した「プレート境界型地震」**とされており、マグニチュード7.9、10万人以上の死者を出した未曽有の大災害でした。しかし、最近の研究によって、**この時にずれ動いたプレートの一部は「全体の半分程度」**であり、残りの半分は今なお大きなひずみを蓄積したままであることがわかってきました。
つまり、関東大震災から100年が経過した今なお、もう一つの“大震災”が発生するリスクが現実として存在しているのです。
本記事では、相模湾のプレート構造や関東大震災のメカニズムを解説しつつ、未発生部分のリスク、今後の地震発生可能性、私たちが備えるべき対策について詳しくお伝えします。
相模トラフとは?地震発生の仕組みを知る
まず、相模湾の地下にある**「相模トラフ」**とは何かを理解する必要があります。
■ 相模トラフの位置と構造
- 相模トラフは、伊豆半島沖〜房総半島沖の海底に位置する、プレート境界型の地形構造
- フィリピン海プレートが**北アメリカプレート(またはユーラシアプレート)**の下に沈み込むことで、強いひずみが生まれる
- この沈み込みによって、エネルギーが蓄積し、それがある閾値を超えると地震として解放される
■ なぜここで地震が起きやすいのか?
- 相模トラフでは、プレートの境界面が非常に浅く、人間の生活圏に近い
- 歴史的にも1703年元禄地震、1923年関東大震災などの巨大地震が発生している
関東大震災と“残された半分”のエネルギー
1923年に発生した関東大震災は、相模トラフの一部が一気にずれ動いたことによって発生しました。多くの研究によると、この時に震源域の南側半分がずれ動いたとされており、北側のエリア(房総半島沖〜東京湾周辺)はまだ解放されていないことが明らかになってきました。
■ 地震研究の進展によってわかった事実
- 地震波の解析、GPS観測、地殻変動データから、プレートの「未滑動域」が特定されてきた
- とくに房総沖エリアは、過去100年以上にわたり大規模な地震が発生していない
- 専門家の中には「もう半分の関東大震災が起こる可能性がある」と指摘する声も
今後起こる可能性がある地震とは?
相模湾プレートの未滑動部分に蓄積されたエネルギーは、いつか必ず解放されます。問題は**「それがいつなのか」**です。
■ 想定される地震の規模と影響
- 地震の想定規模:マグニチュード7.7〜8.1
- 震源地:房総沖〜東京湾周辺の海底
- 被害予想:東京・神奈川・千葉・埼玉で震度6強以上の揺れ、津波・火災・ライフライン損壊など
内閣府や地震調査研究推進本部は、この地域で発生する**「首都直下地震」**を国難級のリスクとして位置付けています。
「想定外」は通用しない──首都直下型地震への備え
もし、未滑動部分がずれ動く地震が発生すれば、東京都心を含む1,000万人以上が直接的な影響を受ける可能性があります。
■ 国の被害想定(内閣府、2022年改訂版より)
- 最悪のケースで死者約2万3千人、全壊家屋61万棟、被害総額95兆円
- 地震直後に最大4割が停電、3割が断水
- 鉄道・道路の損壊によって首都機能が長期間麻痺
現在の予兆や兆候はあるのか?
現在、プレートの歪みや地殻変動は定常的に観測されていますが、地震の発生時期を特定することは極めて困難です。
■ プレート境界の「スロースリップ現象」
- 最近では、地震には至らないがプレートがゆっくりとずれ動く「スロースリップ」が頻発している
- 特に房総半島沖では数年に一度、この現象が起きている
- これは「準備状態」である可能性もあるとされ、注目されています
地震への備え:今からできること
相模湾プレートの地震は**“いつ起きてもおかしくない”**というのが研究者の共通認識です。では、私たちはどう備えるべきでしょうか?
■ 個人でできる準備
- 水・食料の3日〜1週間分の備蓄(特に飲料水は1人1日3Lが目安)
- モバイルバッテリー・LEDライト・ポータブルラジオの確保
- 家具の固定、耐震グッズの設置
- 家族での避難ルート・安否確認手段の確認
■ 自治体・企業の役割
- 地域の防災訓練への参加
- 帰宅困難者対策・災害時の交通マネジメント
- 建物の耐震化・通信インフラの多重化
まとめ:見えない地震とどう向き合うか
相模湾のプレートに残された「もう半分」のひずみは、確実に未来のどこかで地震という形で現れます。それが明日か、数十年後かは誰にもわかりません。
しかし、「必ず来るもの」だからこそ、今から備える意義があるのです。
私たちは100年前の大震災から多くを学び、科学的にも備えが可能な時代に生きています。命を守るのは、知識と準備です。
相模湾プレートの沈黙が破られるその時、あなたとあなたの大切な人が安全であるように。今こそ、防災を「特別なこと」ではなく、「日常の一部」として考え直すタイミングです。
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